症例紹介
糖尿病性ケトアシドーシス
こんにちは。神奈川県秦野市の「みかん動物病院」獣医師の森田です。
愛犬・愛猫が糖尿病と診断されると、日々の食事やインスリン注射など、これまでとは違ったケアが必要になります。
そんな糖尿病の管理を行っていく中で、知っておいていただきたい合併症が「糖尿病性ケトアシドーシス」です。
これは糖尿病が進行・悪化することで起こる、命に関わることもある緊急性の高い状態です。
今回は、糖尿病性ケトアシドーシスの原因や見逃したくないサイン、治療法、予防策について丁寧に解説します。
■目次
1.原因|糖尿病性ケトアシドーシスはなぜ起こる?
2.症状|見逃せない緊急サイン
3.診断と治療|入院による集中管理から回復を目指して
4.予防方法
5.まとめ
原因|糖尿病性ケトアシドーシスはなぜ起こる?
糖尿病は悪化すると、糖の代わりに脂肪が分解されてエネルギーが作られます。その際に生じるケトン体が体内に蓄積し、血液が酸性に傾いた状態が「糖尿病性ケトアシドーシス」です。
犬や猫に強い脱水や電解質の乱れを引き起こし、全身の臓器にも影響しうる重篤な状態です。
ケトアシドーシスに陥る背景には、いくつかの典型的なきっかけが存在します。
・糖尿病の未発見による病気の進行
・治療中における血糖値コントロールの不安定化
・膵炎、感染症、腎臓病などの併発
・発情期によるホルモンバランスの変化(未避妊のメス犬の場合)
・食欲不振や嘔吐を伴う体調不良 など
そして、糖尿病性ケトアシドーシスは急速に進行するため注意が必要です。
糖尿病についてはこちらで解説しています
犬の糖尿病についてはこちらで解説しています
糖尿病のケア(心構え・食事管理・運動管理)についてはこちらで解説しています
症状|見逃せない緊急サイン
ケトアシドーシスを発症した犬や猫は、明らかな体調不良を示します。
飼い主様が日頃から意識して観察しておきたいポイントは「食事量」「飲水量」「尿量」そして「体重の変化」です。
糖尿病の初期から見られる多飲多尿にくわえて「なんとなく元気がなくなってきた」「食事を残すようになった」という変化が重なったときは、黄信号だと捉えて備えておきましょう。
そして、以下のような症状が見られた場合は、夜間であってもすぐに救急で受診してください。
✓ ぐったりしており、呼びかけへの反応が鈍い、または意識がもうろうとしている
✓ 嘔吐を何度も繰り返し、水も飲めない
✓ 深く大きな呼吸、速く苦しそうな呼吸など、明らかな呼吸異常がある
✓ 足元がふらつく、立てない、倒れる、けいれんする
✓ 食事をとらないことにくわえて、嘔吐、強い元気消失、脱水、呼吸異常のいずれかがある
✓ 強い脱水が疑われ、急速に状態が悪化している
「少し様子を見よう」という判断が、短時間のうちに重篤化する恐れがあるのがこの病気の怖いところです。
普段のかかりつけ医に加えて、夜間や休診日に相談できる救急動物病院もあらかじめ確認しておくと安心です。当院は土曜・祝日は終日、日曜日(午前のみ)も診療しており、夜間救急動物医療センターとも連携しています。緊急時の受診についても、どうぞご相談ください。
診断と治療|入院による集中管理から回復を目指して
病院に到着した後は、救命処置と並行して原因を特定するための診察を進めます。
問診では、症状や体重の変化、飲水量・尿量などを確認します。
現在糖尿病の治療中である場合は、インスリンの種類や投与量、投与した時間、そして食事のタイミングや摂取量を正確にお伝えいただくことが重要です。
一頭一頭の状態に合わせて、以下の検査も行います。
・身体検査:脱水、体温、意識状態、呼吸、腹痛などを確認
・血液検査・尿検査:血糖値、ケトン体、血液の酸性度、電解質、腎臓・肝臓の状態などを評価
・画像検査:膵炎、感染症、腎臓病、腫瘍などの原因を調べるため、必要に応じて超音波検査やレントゲン検査を実施
これらの結果をもとに、重症度や悪化の原因を判断し、治療方針を決めていきます。
<治療の流れ>
糖尿病性ケトアシドーシスと診断された場合、入院による集中管理を必要とします。
治療の目的は、深刻な脱水の改善、異常な血糖値とケトン体の補正、そして電解質トラブルの解消です。
◆ 点滴治療
血管から直接水分と必要な電解質を補給し、まずは重度の脱水を改善させて血液の循環を整えることを目指します。その上で、血液検査を何度も繰り返しながら、体のバランスを正常な状態へと引き戻していきます。
◆ インスリン治療
インスリンを少量ずつ慎重に投与し、脂肪の分解とケトン体の産生を抑えながら、血糖値を徐々に整えていきます。治療中は、低血糖やカリウムなどの電解質異常を防ぐため、血糖値や血液検査の数値をこまめに確認します。
あわせて、悪化の引き金となった併発疾患へのアプローチも同時に行います。膵炎や感染症がある場合はその治療を並行し、激しい吐き気や食欲不振に対しては適切な薬剤や、状態に応じた栄養管理を検討します。
このように全身の状態をこまめにチェックしながらの治療となるため、回復までには数日以上の時間がかかるケースも珍しくありません。
状態が十分に安定した段階で、通常の糖尿病管理へと移行していくのが一般的な回復の道筋です。
当院は犬・猫別の「入院室」を完備しております。神奈川県・秦野市近隣で入院を伴う動物病院をお探しの飼い主様は、ぜひ一度ご相談ください。
予防方法
「糖尿病性ケトアシドーシス」に至らないためには、日頃からの徹底した糖尿病管理が大切です。
動物病院での定期的な検査を怠らず、獣医師の指示通りにインスリン注射を正しく行い、指定された食事の量や体重の管理を根気強く継続することで、血糖値の急激な変動を防ぐ助けになります。
避けていただきたいのは、飼い主様の自己判断でインスリンの量を増やしたり減らしたり、投与を中止したりすることです。
たとえば「今日はごはんを食べないからインスリンをやめよう」といった判断が、ケトアシドーシスを招く原因にもなりえます。
また、定期的な健康診断は糖尿病のコントロール状態を知るだけでなく、膵炎や尿路感染症といった、ケトアシドーシスの引き金になる併発疾患の早期発見にもつながります。
まとめ
糖尿病性ケトアシドーシスは、糖尿病が悪化したときに起こる、命にも関わる恐れのある事態です。進行が非常に早く、自宅で様子見をするのではなく、一刻も早い病院での処置が重要です。
「ぐったりしている」「急にごはんを食べなくなった」「何度も吐く」といった普段と違う様子が見られたら、それは体が出しているSOSのサインです。
当院では、一般的な糖尿病の長期的なコントロール治療はもちろん、万が一ケトアシドーシスに陥ってしまった緊急時の入院・集中管理対応まで体制を整えております。
日頃のケアに不安がある方や、小さな体調の変化が気になる飼い主様も、どうぞお気軽にいつでもご相談ください。
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