症例紹介
尿道閉塞で命の危険も?|おしっこが出ないのは危険サイン
神奈川県秦野市・伊勢原市・平塚市・中井町・二宮町・小田原市にお住まいの皆さま、こんにちは。
神奈川県秦野市の「みかん動物病院」、獣医師の森田です。
「最近トイレに行く回数が増えているような気がする」「排尿の姿勢はしているのに、おしっこが出ていないみたい」そんな様子に、心当たりはありませんか?
こうした排尿の変化は、体の異変を示すサインかもしれません。特に注意が必要なのが、「尿道閉塞(にょうどうへいそく)」という状態です。
尿道が詰まり、尿が出せなくなるこの病気は、短時間で命に関わる危険な状態へ進行することがあります。
そこで今回は、尿道閉塞の原因や見られる症状、治療の選択肢、そして日常生活で気を付けたい予防のポイントについて解説します。
■目次
1.尿道閉塞とは?
2.症状
3.尿道閉塞が引き起こす危険な合併症
4.診断と治療の流れ
5.再発予防のために気を付けたいこと
6.まとめ
尿道閉塞とは?
尿道閉塞とは、尿道の中に何らかの障害物ができてしまい、尿の通り道がふさがれてしまう状態を指します。
原因としてもっとも多いのは、膀胱や尿道の中でできる「結石」や、炎症によってつくられる「粘液栓(ねんえきせん)」と呼ばれるゼリー状のかたまりです。これらが尿道に詰まることで、尿がうまく排出できなくなってしまいます。
▼膀胱結石についてはこちらで解説しています
▼尿路結石症についてはこちらで解説しています
特に注意が必要なのは猫で、その中でも去勢済みのオス猫によく見られます。
オス猫の尿道は細くて長く、さらに途中にカーブがあるため、構造的にどうしても詰まりやすいのです。
一方、犬にも尿道閉塞が起こることがあります。主な原因は結石で、特に尿石症や膀胱炎を併発している場合は、閉塞のリスクがさらに高くなります。
また、冬は尿道閉塞が増えやすい季節でもあります。寒さによって飲水量が減るほか、運動不足により代謝が落ちることで、排尿トラブルが起こりやすくなると考えられています。
症状
尿道閉塞は、できるだけ早く気づいて対応することが、命を守るための大切なポイントです。
以下のような症状が見られた場合は、迷わず動物病院にご相談ください。
・トイレに何度も行くのに、尿が出ていない、または数滴しか出ない
・排尿時に鳴く、または痛そうな様子を見せる
・血が混じった尿が出る、尿の色が赤っぽい
・尿が濁っている
・元気がなく、ぐったりしている
・食欲がなく、吐いてしまう
これらの症状は、便秘と間違われることもありますが、実は尿道閉塞が原因となっているケースもあります。
尿道閉塞が引き起こす危険な合併症
尿道閉塞は、放置すると命に関わる深刻な合併症を引き起こすことがあります。
中でも特に注意が必要なのが、「急性腎障害」です。尿が体内にたまって排出されないことで腎臓に大きな負担がかかり、腎機能が著しく低下してしまいます。
わずか1〜2日程度の放置でも、腎臓に取り返しのつかないダメージを与える恐れがあります。
さらに、尿が出ない状態が続くと、血液中のカリウム濃度が急激に上昇し、「高カリウム血症」と呼ばれる危険な状態になることもあります。
この状態になると、心臓のリズムが乱れ、不整脈や心停止を引き起こすことがあり、命の危険が伴います。
また、膀胱に尿がたまり続けることで膀胱が過度に拡張し、最悪の場合、膀胱が破裂してしまうケースもあります。そうなると緊急手術が必要になります。
このように、尿道閉塞は「少し様子を見よう」という判断が命取りになる病気です。
少しの異変でも気づいた時点で早めに動物病院を受診することが、愛犬や愛猫の命を守るうえで何よりも大切です。
診断と治療の流れ
動物病院ではまず、触診や超音波検査、レントゲン検査などを行い、膀胱の状態や尿の溜まり具合、尿道がどの部分で詰まっているのかを確認します。
あわせて、血液検査で腎臓の働きや電解質(体内のミネラルバランス)に異常がないかどうかも詳しく調べます。
治療では、まず尿道の詰まりを取り除くことが最優先です。
多くの場合、麻酔をかけてカテーテル(細い管)を尿道に挿入し、詰まっている異物や結石を洗い流す「尿道カテーテル設置」という処置が行われます。
排尿が再開されたあとは、点滴によって電解質のバランスを整えたり、腎機能をサポートしたりといったケアが続けられます。
また、結石が繰り返しできる場合や、尿道や膀胱に強い炎症があるときは、長期的な食事療法や内服薬の継続が必要です。
さらに、再発を何度も繰り返すオス猫の場合には、「会陰尿道造瘻術(えいんにょうどうぞうろうじゅつ)」という手術が検討されることもあります。
この手術では、尿道の出口を広げて新しい尿の通り道をつくることで、再び詰まってしまうリスクを大きく減らします。
再発予防のために気を付けたいこと
尿道閉塞は、一度起こしてしまうと再発しやすい病気でもあります。そのため、日々の生活習慣を見直すことがとても大切です。
◆水分摂取の工夫
基本となるのが、水分をしっかり摂れる環境づくりです。
ドライフードだけでなくウェットフードを取り入れたり、水飲み場を複数設置したり、循環型の自動給水器を活用するなど、自然にたくさん水を飲めるような工夫をしてあげましょう。
◆食事管理のポイント
次に大切なのが、食事の内容の見直しです。
獣医師の指導のもとで療法食を続けることで、尿のpHバランスが保たれ、結晶や結石の再形成を防ぐ助けになります。
◆ストレスの少ない生活環境づくり
トイレ環境や日々の生活リズムを見直すことも、再発予防には欠かせません。
ストレスは尿道炎や膀胱炎の引き金になることがあるため、静かで清潔なトイレを複数用意するなど、安心して排尿できる環境を整えてあげましょう。
また、来客や騒音、トイレの場所変更などもストレスの原因になることがあります。
できるだけ変化の少ない、穏やかな生活を心がけてあげると安心です。
◆定期的な尿検査と早期発見
再発を防ぐためには、定期的な尿検査も大切です。
たとえ症状が見られなくても、検査によって初期の異常を早めに見つけることができます。
特に体調の変化が出やすい季節の変わり目などには、意識的にチェックするようにしましょう。
まとめ
尿道閉塞は、命に関わる恐れのある非常に危険な病気です。特にオス猫では発症リスクが高く、早期発見と早期治療が何よりも重要です。
また、日常の食事内容や水分摂取、生活環境を見直すことは、再発の予防にもつながります。
もし愛犬や愛猫の「おしっこの様子がいつもと違う」と感じたら、できるだけ早く動物病院に相談しましょう。
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