症例紹介
犬の胃拡張|お腹が急に膨らんだら要注意
神奈川県秦野市・伊勢原市・平塚市・中井町・二宮町・小田原市にお住まいの皆さま、こんにちは。
神奈川県秦野市の「みかん動物病院」、獣医師の森田です。
愛犬のお腹がパンパンに膨らんでいる時、「食べすぎかな?」と軽く考えてしまうかもしれませんが、胃拡張」と呼ばれる緊急性の高い病気である可能性があります。
胃拡張は進行が非常に早く、場合によっては命に関わることもあるため、特に大型犬と暮らしている飼い主様には注意していただきたい重要な疾患です。
今回は、胃拡張とはどのような状態か、主な症状の見分け方や治療法、そして予防のポイントについて解説します。
■目次
1.胃拡張とは?
2.命に関わる症状を見逃さないで
3.胃拡張が引き起こす合併症
4.診断と治療について
5.胃拡張を予防する方法
6.まとめ
胃拡張とは?
胃拡張とは、胃の中にガスや液体、食べ物が過剰にたまり、胃が通常よりも大きく膨らんでしまう状態を指します。
特に注意が必要なのが、「胃拡張・胃捻転症候群(GDV)」と呼ばれる重篤なタイプです。これは、拡張した胃がねじれてしまうことで、胃の中の内容物が排出されなくなったり、胃への血流が遮断されたりする非常に危険な病態です。
この病気は、グレート・デーンやジャーマン・シェパード、ボルゾイなど、胸の深い体型をもつ大型犬によく見られます。ただし、中型犬や小型犬でも発症することがあり、どの犬種でも油断はできません。
また、加齢に伴う筋力の低下や消化機能の変化により、年齢が高くなるほどリスクが高まる傾向もあるため、高齢の犬は特に注意が必要です。
命に関わる症状を見逃さないで
胃拡張の初期症状は、日常の様子とわずかに異なる程度の「違和感」として現れることが多く、見逃されやすい傾向があります。
しかしこの病気は、発症からわずか数時間で急速に悪化する可能性があるため、早期の気づきと対応が何よりも重要です。
以下のような症状が見られた場合は、迷わず速やかに動物病院を受診してください。
・お腹が異常に膨らんでいる
・嘔吐しようとしても何も出ない、または泡状の液体だけを吐く
・よだれを大量に流す
・不安そうに落ち着かず、部屋の中をうろうろする
・呼吸が浅く、早くなる
・ぐったりして動かない、意識がもうろうとしている
こうした症状が進行すると、ショック状態に陥る危険性があります。数時間以内の処置が生存率を大きく左右することを、あらかじめ理解しておくことが大切です。
胃拡張が引き起こす合併症
胃拡張の恐ろしさは、単に胃が膨らむこと自体にとどまりません。拡張によって引き起こされるさまざまな合併症が、命に関わる深刻な状態を招くことがあります。
◆胃壁の血流障害
胃が拡張することで、胃の壁への血流が妨げられ、組織が壊死してしまうことがあります。
◆ショック状態への進行
血液循環が悪化することで血圧が低下し、全身への酸素供給が不十分になります。
◆心臓や肺の圧迫
膨張した胃が横隔膜を押し上げることで、呼吸困難や不整脈を引き起こすことがあります。
◆胃の破裂
極度の膨張が続くと、胃が破裂して内容物が腹腔内に漏れ出す危険もあります。
これらの合併症は進行が非常に早く、発症から2〜3時間で死亡率が急激に上昇し、6時間を超えると致命的となるケースがほとんどです。
そのため、「しばらく様子を見る」という判断は非常に危険ですので、異変に気づいたらすぐに動物病院を受診することが重要です。
診断と治療について
当院では、胃拡張が疑われる場合、できる限り迅速かつ的確な診断と処置を行っています。
まず、触診およびレントゲン検査により、胃の膨張の程度や捻転の有無を確認します。必要に応じて、超音波検査や血液検査を併用し、全身状態を把握した上で治療方針を決定します。
治療は、症状の進行具合によって以下のように対応が分かれます。
◆ガス抜き
軽度の場合は、胃にたまったガスを専用のチューブで抜くことで改善が見込まれることもあります。
◆緊急手術
胃の捻転が確認された場合には、速やかな開腹手術が必要です。手術では、ねじれた胃を正常な位置に戻し、再発を防ぐために胃を腹壁に固定する「胃固定術」を行います。
◆集中治療
手術後は、ショックへの対策として点滴管理や心電図によるモニタリングを行い、24時間体制で全身状態を注意深く管理します。
胃拡張を予防する方法
胃拡張・胃捻転症候群は、発症すると命に関わる恐れのある病気です。そのため、日頃から予防を意識することが最も大切な対策となります。
以下のポイントを参考に、愛犬の生活習慣を見直してみましょう。
<食事の与え方・水の飲み方>
◆食事は1日2〜3回に分けて
1日1回の大量の食事は胃に負担をかけます。複数回に分けて与えることで、胃への急激な負担を避けましょう。
◆食後は安静に
食後すぐに激しく動くと、胃のねじれが起こる可能性があります。食後30分〜1時間は、落ち着いて過ごさせるようにしましょう。
◆早食いを防ぐ工夫を
早食いは胃にガスがたまりやすくなる原因のひとつです。早食い防止用のフードボウルや、フードをおもちゃに詰めて与えるなど、食べるスピードをゆるやかにする工夫が効果的です。
◆水分はこまめに
運動後などに一気に水を飲ませると、胃に急激な刺激を与えてしまうことがあります。常に新鮮な水を用意し、こまめに水分をとれるようにしましょう。
<生活環境>
◆ストレスの少ない環境づくり
環境の変化や強い興奮は、胃腸の働きに影響を及ぼします。生活リズムを整え、安心できる空間をつくることも、胃拡張の予防につながります。
まとめ
胃拡張は、発症からわずか数時間で命を脅かすこともある、非常に危険な病気です。
しかし、飼い主様がそのリスクを正しく理解し、早期に異変に気づいて受診することで、救える命は確実にあります。
日頃から食事や生活習慣を見直し、いざというときに冷静に対応できるように備えておくことが、愛犬の命を守るために最も大切なことです。
「いつもと様子が違う」と感じたときは決して様子を見ず、できるだけ早く動物病院を受診しましょう。
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