症例紹介
皮膚真菌症(白癬)|人にも感染するカビの病気とは?
神奈川県秦野市・伊勢原市・平塚市・中井町・二宮町・小田原市にお住まいの皆さま、こんにちは。
神奈川県秦野市の「みかん動物病院」、獣医師の森田です。
愛犬や愛猫の皮膚に円形の脱毛、フケ、かさぶたなどの異常が見られたら、それは皮膚真菌症(白癬)かもしれません。
白癬(はくせん)とは、「皮膚糸状菌」と呼ばれるカビの一種が原因で発症する皮膚感染症です。この病気は人間にも感染する可能性がある「人獣共通感染症」の一つであり、注意が必要です。
皮膚真菌症は比較的よく見られる疾患ですが、初期のうちはかゆみが軽度で、症状が目立ちにくいこともあるため、早期発見・適切な治療がとても大切 です。
今回は、皮膚真菌症の原因や症状、検査・治療法、そして予防策について詳しく解説します。
■目次
1.皮膚真菌症とは?
2.主な症状と特徴
3.診断方法
4.治療法
5.皮膚真菌症の再発を防ぐためにできること
6.人にも感染する皮膚真菌症の注意点
7.まとめ
皮膚真菌症とは?
皮膚真菌症は、「皮膚糸状菌」と呼ばれるカビの一種が皮膚に感染することで発症する病気です。
犬や猫で特に多いのは「Microsporum canis(ミクロスポルム・カニス)」という菌種で、特に猫では無症状のまま菌を保有しているケースもあります。そのため、知らないうちに他の動物や人に感染させてしまうこともあります。
<感染経路>
皮膚真菌症は、感染した犬や猫と直接接触することで感染することが多いです。また、カーペットや布団、爪とぎ、ブラシなどに付着した真菌に触れることでも感染が広がります。
さらに、人間の手や衣服を介して真菌が運ばれ、間接的に感染するケースもあります。そのため、感染が疑われる場合は、動物だけでなく生活環境の衛生管理にも注意が必要です。
<感染しやすい犬・猫の特徴>
皮膚真菌症はすべての犬や猫に発症するわけではありませんが、以下の条件に当てはまる場合は感染リスクが高くなります。
・子犬・子猫:免疫が未発達のため、感染しやすい
・高齢:免疫機能の低下により感染しやすい
・持病がある:糖尿病や免疫疾患など、体の抵抗力が低下している
・皮膚バリアが低下している:皮膚に傷がある、乾燥しているなど
・多頭飼育環境:接触が多く、感染が広がりやすい
主な症状と特徴
皮膚真菌症は、犬と猫で多少の違いはありますが、共通する症状として円形の脱毛斑が見られることが多い病気です。
<犬の場合>
犬の場合、顔・耳・四肢・胴体などに以下のような症状が現れることがあります。
・円形の脱毛(主に顔、耳、四肢、胴体にできる)
・フケやかさぶたが増える
・皮膚が赤くなる(発赤)
・軽度〜中程度のかゆみ
・毛がポロポロ抜ける
特に軽症のうちはかゆみが少ないこともあり、脱毛やフケの増加だけでは気づかれにくいことがあります。
<猫の場合>
猫では顔・耳・前脚に症状が出やすく、以下のような特徴があります。
・脱毛(顔、耳、前脚に多い)
・フケやかさぶたが増える
・かゆみは犬より軽いことが多い
・皮膚がガサガサする
特に猫は「無症状キャリア」のケースが多く、見た目に異常がなくても皮膚糸状菌を保有していることがあります。 多頭飼育の場合、1匹が発症すると他の猫にも感染が広がる可能性があるため、注意が必要です。
皮膚真菌症は早期発見・早期治療がとても重要です。もし気になる症状があれば、迷わず動物病院に相談しましょう。
診断方法
皮膚真菌症(白癬)は、他の皮膚疾患と症状が似ていることが多いため、正確な診断が非常に重要です。
以下のような検査を段階的に行い、皮膚真菌症かどうかを判断します。
◆ウッド灯検査
ウッド灯(特殊な紫外線ランプ)を当てて、特定の真菌(Microsporum canis)に感染した部分が緑色に光るかどうかを確認する検査です。
ただし、すべての真菌が光るわけではないため、陰性だからといって感染を完全に否定できるわけではありません。
◆皮膚掻爬(そうは)検査
皮膚の一部をこすり取り、顕微鏡でダニ(疥癬)や細菌感染との鑑別を行う検査です。
皮膚真菌症と間違えやすい疾患を見分けるために役立ちます。
◆真菌培養検査
皮膚や毛を採取し、培養を行って菌の種類を特定する検査です。
確定診断に必要な検査ですが、結果が出るまでに1〜3週間かかることがあるため、他の診断方法と組み合わせて総合的に判断します。
<重要ポイント>
皮膚真菌症は、細菌性皮膚炎、疥癬、アレルギー性皮膚炎、ホルモン異常など、他の皮膚疾患と症状が似ています。そのため、皮膚検査だけでなく、血液検査やレントゲン検査など複数の検査を組み合わせることが大切です。
治療法
治療は、外用薬(塗り薬)、内服薬、シャンプー療法 などを組み合わせて行います。
<外用薬(塗り薬)>
局所的に症状が見られる場合は、患部に直接塗布できる抗真菌クリームや軟膏、スプレーが効果的です。一般的にミコナゾールやクロトリマゾールなどの抗真菌成分を含む薬が使用されます。
薬を塗る際は、皮膚にしっかりと浸透させることが重要です。特に毛が長い犬や猫では、患部の毛をカットすることで薬の効果が高まり、より治療がスムーズに進みます。
<抗真菌シャンプー療法>
症状が広範囲に広がっている場合は、ミコナゾールやケトコナゾールなどの抗真菌成分を含むシャンプーを使用します。通常、週に2〜3回の洗浄が推奨されますが、症状が落ち着いてきたら頻度を減らすことも可能です。
シャンプーの際は、泡をしっかりと馴染ませた後、数分置いてから丁寧に洗い流すことが大切です。 また、シャンプー後は皮膚の乾燥を防ぐために、適切な保湿ケアを行うとより効果的です。
< 内服薬(経口抗真菌薬)>
重症例や再発を繰り返す場合には、イトラコナゾールやケトコナゾールなどの抗真菌薬を使用することがあります。これらの薬は、皮膚の奥深くまで作用し、外用薬だけでは対応が難しい症状にも効果を発揮します。
内服薬は、長期間の投与が必要になることがあるため、獣医師の指示に従って適切に服用することが大切です。 また、一部の薬は肝臓に負担がかかる可能性があるため、定期的な血液検査を行いながら慎重に管理する必要があります。
皮膚真菌症の再発を防ぐためにできること
皮膚真菌症は、環境中にも真菌が残りやすいため、適切な対策を行わないと再発のリスクが高まります。 治療と並行して、生活環境を清潔に保ち、感染拡大を防ぐことが大切です。
◆生活環境を清潔に保つポイント
真菌は布製品や床などに付着しやすいため、こまめな掃除と換気が重要です。
ベッドやクッション、カーペットなどの布製品は定期的に洗濯し、しっかり乾燥させましょう。
また、室内の湿度が高いと真菌が繁殖しやすくなるため、換気をこまめに行い、なるべく高温多湿を避けることも効果的です。掃除機をこまめにかけたり、除菌スプレーを活用したりして、生活空間を清潔に保つようにしましょう。
◆多頭飼育での感染予防と管理
多頭飼育では感染が広がりやすいため、感染した動物は一時的に隔離し、他の動物との接触を避けることが大切です。
また、症状がない動物でも定期的に皮膚の状態をチェックし、異常がないか確認することが重要です。飼い主様自身も感染した動物に触れた後は手洗いや衣服の清潔を心がけ、真菌の拡散を防ぐようにしましょう。
人にも感染する皮膚真菌症の注意点
皮膚真菌症は「人にも感染する可能性がある」ため、特に小さな子どもや高齢者、免疫力の低い方は注意が必要です。
<人に感染した場合の症状>
皮膚真菌症が人に感染すると、以下のような症状が現れることがあります。
・赤く丸い発疹(リング状の湿疹)
・かゆみを伴う皮膚の炎症
・患部がじくじくと湿ることがある
まとめ
皮膚真菌症(白癬)は犬や猫だけでなく、人にも感染する可能性がある皮膚疾患です。しかし、適切な診断と治療を受ければ、多くのケースで改善が期待できます。
愛犬や愛猫の皮膚に円形脱毛やフケ、かさぶたが見られた場合は、できるだけ早めに動物病院で診察を受けることが大切です。
また、この病気は人にも感染することがあるため、動物に触れた後は手を洗う、寝具を共有しないなど、日常生活の中で予防策を徹底しましょう。
皮膚真菌症の疑いがある場合や、治療についてご不明な点があれば、お気軽に当院までご相談ください。
■皮膚に関連する記事はこちらでも解説しています
・ノミアレルギー皮膚炎
・膿皮症
・愛犬の抜け毛、少なくしたくないですか??
・換毛期でもないのに抜け毛が気になる…それって病気が原因かも?|犬と猫の抜け毛対策について
・「うちの子の皮膚が治らない…」 “仕方ない”と諦めていませんか?
■当院の予約はこちら
電話番号:0463-84-4565
web予約:https://mkn-a-hospital.reserve.ne.jp/
神奈川県秦野市の動物病院なら『みかん動物病院』
みかん動物病院の診療案内はこちらから