症例紹介

整形外科

交通事故による脛骨複雑骨折|治療困難な骨折への当院の取り組み

こんにちは、神奈川県秦野市の「みかん動物病院」、獣医師の森田です。

交通事故や高所からの落下といった思いがけないアクシデントで、愛犬や愛猫が動けなくなり、病院で「脛骨の複雑骨折」と診断されることがあります。
突然の現実を前に、「もう歩けないのでは」「一生このままかもしれない」と、深い不安や絶望に包まれてしまう飼い主様も少なくありません。

しかしながら、脛骨の複雑骨折は決して回復が望めないケガではありません
適切な診断と治療、そしてリハビリテーションを行えば、再び歩けるようになる犬や猫もたくさんいます。

今回は、犬や猫における脛骨複雑骨折の特徴や治療法、当院での取り組みについて分かりやすくご紹介します。

 

■目次
1.脛骨複雑骨折とは?
2.診断と手術適応の判断
3.手術後の経過と回復期間
4.当院の治療症例と予後
5.まとめ

 

脛骨複雑骨折とは?

脛骨複雑骨折とは、犬や猫の後ろ脚にある脛骨が細かく砕けるように折れてしまう重度の骨折です。

犬や猫の後ろ脚は、太い「脛骨」と細い「腓骨」という2本の骨で構成されています。脛骨は人間でいうスネの骨にあたり、体重をしっかりと支える重要な骨です。
そのため、交通事故や転落など強い衝撃を受けると折れてしまうことが多い部位です。

「複雑骨折」とは、骨が3つ以上の断片に分かれた状態を指します。
骨片が細かく分かれているため整復が難しく、周囲の筋肉・血管・神経にも損傷を伴いやすいのが特徴です。

また、脛骨は癒合不全(骨がうまくつかない状態)を起こしやすい場所でもあり、治療に特に注意を要します。

脛骨近位端成長板骨折についてはこちらで解説しています

 

診断と手術適応の判断

骨折を確認するにはまずレントゲン検査を行い、どのように折れているかを調べます。

しかし複雑骨折では、平面的な画像だけでは骨片の位置が把握しづらい場合があります。
そこで当院ではCT検査を取り入れ、3次元的に骨折状態を把握します。
これにより、どのように手術を進めるのが最適かをより正確に判断することができます。

手術が必要かどうかは、骨片の数や転移の程度(ズレの大きさ)、軟部組織(骨周囲の組織)のダメージを総合的に見て決めます。多くの場合、そのままにしておくと癒合不全になる危険が高いため、LCPプレートやスクリューを用いた手術で固定するのが最善とされています。

 

手術後の経過と回復期間

手術が終わったからといって、すぐに元気に走れるわけではありません。
術後1〜2週間は安静が必要で、骨がしっかり固定されるのを待ちます。

その後、少しずつ運動を再開し、筋力や関節可動域を回復させていきます。

 

<骨折後のリハビリ>

リハビリの方法にはさまざまなものがあります。

 

水中トレッドミルを利用した歩行訓練
水の浮力を利用して、脚への負担を軽減しながら歩行訓練を行えるマシーンです。
地上よりも関節や骨にかかるストレスが少なく、安全に筋力を取り戻すのに適しています。初めて歩行を再開する段階で、特に有効な方法です。

 

地上での段階的な歩行訓練
平らな場所での歩行から始めて、徐々に坂道や階段へとレベルを上げていきます。無理のない範囲で継続することが、回復を支えます。

 

ご自宅でのストレッチ
ご自宅では、脚の関節をやさしく曲げ伸ばしする屈伸運動や、太もも裏を軽く伸ばすストレッチを無理のない範囲で行うと、関節の柔軟性を保つ助けになります。
愛犬・愛猫がリラックスしているときに、痛みのない範囲でゆっくり行いましょう。

 

<経過の観察>

術後は定期的にご来院いただき、レントゲン検査などで骨の癒合やプレートの固定状態を確認します。
骨の状態に合わせて、運動量やリハビリの内容を調整していくことが大切です。

また、日常生活の中で飼い主様に気をつけていただきたいポイントがあります。

・足の腫れ
・痛がる様子が続く
・歩き方に左右差やふらつきがある

このような変化が見られた場合は、早めの受診をお願いいたします。
合併症の早期発見につながり、回復を妨げないためにも重要です。

 

当院の治療症例と予後

実際に当院で治療した脛骨複雑骨折の症例をご紹介します。

こちらの症例では、周囲組織や骨の血行を阻害しないようLCP(ロッキングプレート)を使用し、強度を保つためにダブルプレート(2枚のプレートによる固定)で固定しています。

 

手術レントゲンのbefore/after写真二枚:(1枚目)関節周辺が折れている(2枚目)術後、周囲組織や骨の血行を阻害しないようLCP(ロッキングプレート)を使用し、強度を保つために前には板状のプレート、後ろ側には鎖状の2枚のプレートにより固定した様子

 

 

別の手術before/afterレントゲン写真2枚:(1枚目)骨のつなぎ目の赤丸の部分に骨折が見られ、脚が前傾している(2枚目)プレートで固定し、脚の骨がまっすぐになっている

 

脛骨複雑骨折は確かに難しい骨折ですが、決して「治らないケガ」ではありません
適切な治療を受ければ、歩行機能を取り戻し再び笑顔でお散歩できる日がやってきます。

 

<脛骨複雑骨折を放置した場合のリスク>

もし治療を受けずに放置してしまうと、以下のようなリスクがあります。

・偽関節:本来骨が癒合するはずの部位に関節のような動きが残ってしまう状態。治癒が困難となり、手術がさらに複雑になることがあります。
・慢性的な痛み:骨が正しく癒合しないことで、神経や周囲組織に負担がかかり、痛みが長引く原因になります。
・歩行障害:脚の長さが左右で不揃いになる、関節の動きが悪くなるなどにより、正常な歩行が困難になります。

早めの処置が、その後の回復を大きく左右します。
しっかりとサポートをいたしますので、気になる症状があればできるだけ早くご相談ください。

 

まとめ

「脛骨複雑骨折」と聞くと、重症で絶望的なイメージを持たれる方が多いかもしれません。しかし、的確な診断と治療、そしてその後のリハビリをしっかり行えば、歩行機能の回復は十分に期待できます

私たちは飼い主様に寄り添いながら、愛犬・愛猫が少しでも早く、痛みのない生活に戻れるよう全力でサポートいたします。
どうか諦めずに、治療の選択肢があることを知っていただければと思います。

 

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