症例紹介

泌尿器科

犬の精巣腫瘍|左右差やしこりは要注意!

神奈川県秦野市・伊勢原市・平塚市・中井町・二宮町・小田原市にお住まいの皆さま、こんにちは。
神奈川県秦野市の「みかん動物病院」、獣医師の森田です。

未去勢の雄犬では、精巣腫瘍の発生率が高く、雄犬にできる腫瘍の中では2番目に多い腫瘍とされています。そのため、去勢手術は病気の予防という点でも非常に重要な処置のひとつといえるでしょう。

さらに、精巣腫瘍は初期にはほとんど症状が現れないこともあり、気づかずに進行してしまうケースも少なくありません。
その結果、腫瘍が大きくなってから発見されることもあり、手術の難易度が上がったり、術後の管理が複雑になったりすることもあるため、注意が必要です。

今回は、雄犬に多くみられる「精巣腫瘍」について、主な症状や治療法、そして予防の大切さについてお話しさせていただきます。

 

■目次
1.精巣腫瘍とは?
2.症状と早期発見のポイント
3.診断方法と検査について
4.治療法
5.予防法と早期発見の重要性
6.まとめ

 

精巣腫瘍とは?

犬の精巣腫瘍は、中〜高齢の未去勢の雄犬に多く見られる腫瘍で、雄犬にできる腫瘍のうち約16.8%を占めると報告されています。
腫瘍の種類は主に以下の3つに分類されます。

・精上皮腫(セミノーマ)
・セルトリ細胞腫
・間質細胞腫(ライディッヒ細胞腫)

特に注意が必要なのが、「潜在精巣」と呼ばれる状態です。
これは、本来陰嚢の中にあるはずの精巣が、お腹の中や皮膚の下にとどまっている状態のことを指します。
潜在精巣を持つ犬は、正常に精巣が下降している犬と比べて、腫瘍が発生するリスクが13倍以上高いといわれています。
さらに、潜在精巣にできた腫瘍は、悪性である可能性も高いため、早めの処置や去勢手術が推奨されることがあります。

犬の精巣腫瘍の約80〜90%は良性とされています。
そのため、他の臓器への転移は比較的少ない傾向がありますが、油断は禁物です。

 

症状と早期発見のポイント

犬の精巣腫瘍で最もわかりやすいサインのひとつが、精巣の左右差です。
通常、健康な状態であれば左右の精巣はほぼ同じ大きさですが、どちらか一方が大きくなっている場合には、腫瘍が疑われることがあります。

また、潜在精巣のある犬では、若いころには触れにくかったお腹の中の精巣が、年齢とともに触れやすくなってきたり、陰茎の横にしこりのような膨らみを感じたりする場合には注意が必要です。

さらに、精巣腫瘍の中には、エストロゲン(女性ホルモン)を分泌するタイプもあり、その影響で次のような症状が見られることもあります。

乳頭の腫れ(乳頭肥大)
体の左右対称な脱毛(特に体幹部)

このような変化に早く気づくためには、日常のお手入れの際に精巣を触って確認する習慣を持つことが大切です。
たとえば、ブラッシングやシャンプーのときなどに、精巣の大きさに左右差がないかをチェックすることを習慣づけましょう。
また、動物病院での定期的な健康診断や、ワクチン接種の際の触診なども早期発見につながります。

 

診断方法と検査について

精巣腫瘍は、視診(見た目の観察)と触診(手で触れての診察)によって、ある程度の診断が可能です。
左右の精巣の大きさに差がある場合や、しこりのようなふくらみがある場合には、腫瘍の疑いがあると判断されます。

ただし、潜在精巣の場合は、外からは確認しづらいため、超音波検査(エコー)を用いて、腫瘍化しているのが精巣であるかどうかを確認することもあります。

また、精巣腫瘍は中〜高齢の犬に多く見られるため、全身の健康状態を把握する目的で血液検査を行うことがあります。
加えて、肺などへの転移の有無を確認するために、レントゲン検査を実施することもあります。

 

治療法

犬の精巣腫瘍に対する治療は、外科手術による摘出が基本となります。
ここでは、当院で実際に行った症例をもとに、治療の流れをご説明いたします。

手術は全身麻酔下で実施します。まず、手術部位の被毛を刈り、しっかりと消毒を行ったうえで皮膚を切開し、腫瘍化した精巣を露出させます。

 

次に、精管や精巣につながる動静脈を糸で縛り(これを「結紮」といいます)、出血しないようにしてから精巣を切り離します。
なお、腫瘍が片側だけに見られる場合でも、もう一方の精巣も将来的に腫瘍化するリスクを考慮し、同様に摘出するのが一般的です。

その後、傷口を丁寧に縫合して手術は終了します。

 

今回の症例では、摘出した腫瘍の大きさが約10cm × 10cmとかなり大きく、病理検査の結果、精上皮腫(セミノーマ)とセルトリ細胞腫が混在した混合腫瘍であることがわかりました。

 

前述のとおり、精巣腫瘍の多くは良性であることが多いため、手術後の経過は比較的良好なケースが多く見られます。
傷口がしっかりと治り、抜糸をすれば、普段の生活に問題なく戻ることができます。

 

予防法と早期発見の重要性

犬の精巣腫瘍を予防するためには、去勢手術を行うことが最も確実な方法です。
特に、若齢期(生後6か月〜1歳ごろ)に去勢を行うことで、精巣腫瘍だけでなく、前立腺肥大や肛門周囲腺腫など、雄犬に多く見られる他の病気の予防にもつながることが知られています。

一方で、去勢を行わない選択をされる場合は、日ごろから愛犬の体調の変化に気づくことがとても大切です。
今回ご紹介した症例のように、腫瘍が大きくなってから見つかると、手術後の傷口も大きくなりやすく、術中の出血や、摘出後の低血圧といったリスクも高まります。

そのため、「いつもと何か違うかも?」と少しでも感じることがあれば、できるだけ早めに動物病院を受診しましょう。

 

まとめ

精巣腫瘍は、去勢手術によって未然に防ぐことができる病気です。
「今は元気だから大丈夫」「手術はかわいそうかも」と迷われるお気持ちも、もちろんよくわかります。
それでもぜひ一度、愛犬のこれからの健康や生活について、立ち止まって考えてみてください。
手術をするかどうかの判断は、飼い主様ご自身にとっても大きな決断になるかと思います。わからないことやご不安な点があれば、どうぞお気軽にご相談ください。

愛犬と飼い主様が安心して、健やかに、幸せな日々を送れるよう、私たちがしっかりとサポートさせていただきます。

 

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