症例紹介

消化器科

動物病院での内視鏡検査について|安全な診断方法で病気を早期発見

神奈川県秦野市・伊勢原市・平塚市・中井町・二宮町・小田原市にお住まいの皆さま、こんにちは。
神奈川県秦野市にあるみかん動物病院、獣医師の森田です。

内視鏡検査とは、先端に小さなカメラがついた細い管を口や肛門から挿入し、胃や腸の内部を直接観察する検査です。レントゲンや超音波検査ではわかりにくい粘膜の状態や病変を詳しく調べることができ、必要に応じて組織を採取して病理検査を行うことも可能です。

また、開腹手術と比べて体への負担が少なく、検査後の回復が早いのも大きなメリットです。ほとんど痛みを感じることなく検査を受けられるため、愛犬や愛猫にとっても安心できる方法といえるでしょう。

今回は、動物病院で犬や猫に対してどのように内視鏡検査が行われるのかを、詳しく解説していきます。

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■目次
1.内視鏡検査が可能な部位と適応される症状
2.内視鏡検査のメリットとは?
3.内視鏡検査の流れ
4.実際の内視鏡検査の事例
5.早期発見・早期治療の重要性
6.まとめ

 

内視鏡検査が可能な部位と適応される症状

内視鏡検査は、口または肛門からカメラを挿入し、胃・十二指腸・結腸・直腸の状態を詳しく調べることができます。特に、以下のような症状が見られる場合に検査が推奨されます。

 

<胃・十二指腸の検査が必要な症状>

・血が混じった嘔吐がある
・慢性的に嘔吐を繰り返している
・食欲不振や体重減少が続いているが、血液検査では原因が特定できない
・異物誤飲の可能性がある
・黒色便(タール便)が見られる

胃や十二指腸に炎症がある場合や、潰瘍・腫瘍が疑われるときに内視鏡を用いることで、病変の有無を確認できます。特に黒色便は、消化管の上部で出血が起こっているサインかもしれません。
また、飲み込んでしまった異物がどこにあるのかを調べ、必要に応じて摘出することも可能です。

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<結腸・直腸の検査が必要な症状>

・慢性的な下痢が続いている
・血便が出る

結腸や直腸に異常があると、便の状態に変化が現れます。内視鏡を使うことで、これらの症状の原因をより詳しく調べることができます。

 

内視鏡検査のメリットとは?

内視鏡検査の最大のメリットは、開腹手術をせずに胃や腸の内部を詳しく調べられることです。そのため、愛犬や愛猫の体への負担が少なく、回復が早いという大きな利点があります。

・体への負担が少なく、回復もスムーズ
お腹を切開しないため、検査後の入院や抜糸が不要で、日常生活への影響も最小限に抑えられます。痛みもほとんどなく、ストレスを感じにくい検査方法のため、愛犬や愛猫の負担を軽減できます。

・粘膜の状態をリアルタイムで確認できる
レントゲンや超音波検査ではわかりにくい消化管(胃や腸など)の粘膜の状態を、直接観察できるのも大きな特徴です。その場で病変の有無や状態を確認できるため、より正確な診断につながります。

・ 検査中に治療を行うことも可能
内視鏡検査では、潰瘍やポリープが見つかった場合に組織の一部を採取し、病理検査に回すことが可能です。
また、誤飲した異物が見つかった際には、そのまま内視鏡を使って取り除くことができるため、開腹手術をせずに済む場合もあります。

 

内視鏡検査の流れ

それでは実際に内視鏡検査を行う際の流れをご説明します。

■事前準備
内視鏡検査が必要かどうかを判断するために、血液検査・レントゲン・超音波検査などの事前検査を行います。
また、内視鏡検査には全身麻酔が必要となるため、事前に麻酔のリスクを評価することが大切です。愛犬や愛猫の健康状態に応じて適切な麻酔薬と投与量を決め、検査中は心電図や血圧を継続的にモニタリングしながら、安全に管理します。

さらに、検査前には胃や腸を空にする必要があるため、8~12時間の絶食が必要です。絶食の時間は動物病院の指示に従いましょう。

 

■検査当日の流れ
1.全身麻酔を実施:愛犬や愛猫がリラックスし、安全に検査を受けられるようにします。

2.内視鏡を挿入し、目的の部位を観察:胃や腸の粘膜を直接確認し、異常がないかを詳しく調べます。

3.必要に応じて組織採取(生検)を実施:病理検査のために粘膜の一部を採取し、炎症や腫瘍の有無を確認します。

検査時間は30分~1時間程度で完了するため、開腹手術と比べると短時間で済むのも大きなメリットです。

 

■検査後のケア
麻酔から完全に覚めるまで、慎重にモニタリングを行います。愛犬や愛猫の意識がしっかり戻り、問題がないことを確認したら退院となります。
ただし、検査後すぐの食事や水分補給は控え、数時間あけてから少量ずつ与えるようにしましょう。検査後の過ごし方については、獣医師の指示を守ることが大切です。

 

実際の内視鏡検査の事例

当院で実施した内視鏡検査の症例をご紹介します。
※ 胃の内部の写真が含まれるため、苦手な方は閲覧にご注意ください。

 

▼慢性的な嘔吐の症状があり、エコー検査を実施したところ、胃の筋肉の一部に肥厚(腫れ)が見つかりました。この異常を詳しく調べるために、内視鏡検査を行うことになりました。

胃のエコー検査画像

 

▼内視鏡を胃に挿入すると、胃壁全体に腫れが見られ、奥にポリープが発見されました。ポリープは、胃の粘膜にできる隆起した病変で、良性のものもあれば悪性(がん)の可能性があるものもあります。

胃のポリープの写真

 

▼こちらが内視鏡で確認できたポリープです。

胃のポリープの写真

 

▼内視鏡には生検鉗子(せいけんかんし)と呼ばれる小さな鉗子がついており、これを使ってポリープの一部を数mm程度切除しました。この範囲であれば縫合は不要で、出血も自然に止まります。

ポリープを生検鉗子で切除している画像  ポリープを生検鉗子で切除している画像②

切除した組織は病理検査に送られ、ポリープがどのような性質のものかを詳しく調べます。病変の種類が特定できることで、今後の治療計画をより適切に立てることが可能になります。

 

早期発見・早期治療の重要性

愛犬や愛猫が慢性的な嘔吐や下痢を繰り返しているにもかかわらず、血液検査や超音波検査では異常が見つからない…。または、何らかの異常はあるものの、確定診断には至らない…。
このような場合、より詳しく調べるために内視鏡検査試験開腹(お腹を開いて直接観察する手術が選択肢となります。

しかし、試験開腹は体への負担が大きく、飼い主様にとっても決断が難しい検査方法です。その点、内視鏡検査は短時間で済み、体への負担も少ないため、より気軽に受けやすい検査といえます。

また、内視鏡検査を行うことで疾患の早期発見が可能になり、重症化を防ぐことができます。特に、慢性疾患の場合は早い段階で治療を開始することで病状をコントロールしやすくなり、愛犬や愛猫の生活の質(QOL)の向上につながるでしょう。

 

まとめ

内視鏡検査は、愛犬や愛猫にとって体への負担が少なく、より詳しい診断ができる検査方法です。
特に、慢性的な症状が続いている場合や、誤飲・誤食をしたものの開腹手術には抵抗がある場合、ほかの検査では原因が特定できない場合には、有効な選択肢のひとつとなります。

また、病気の早期発見・早期治療は、愛犬や愛猫の健康を守るうえでとても重要です。「なんとなく元気がない」「いつもと様子が違う」と感じたら、早めに動物病院に相談してみましょう。

 

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