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犬や猫から人にも感染?SFTS(重症熱性血小板減少症候群)とは?

こんにちは!
神奈川県秦野市のみかん動物病院、愛玩動物看護師の若月です🍊
最近ニュースで耳にすることが増えた感染症「SFTS(重症熱性血小板減少症候群)」。
マダニを介して犬や猫、さらに人にも感染する可能性があり、飼い主様にとっても無関係ではない病気です。
特に、自然が多い地域でお散歩をする犬や、外に出ることもある猫と暮らしているご家庭では、マダニ対策がとても重要になります。
そこで今回は、SFTSとはどのような病気なのか、犬や猫を介して人に感染する可能性、そして飼い主様が日常生活の中でできる現実的な予防方法について、わかりやすくご紹介していきます。
■目次
1.SFTS(重症熱性血小板減少症候群)とはどんな病気?
2.全国の発生状況と実際の事例とは
3.マダニ予防薬の効果と限界
4.SFTSの予防は日常から!飼い主様ができるSFTS対策
5.当院のSFTS対策と、飼い主様へのサポート
6.さいごに
【💥SFTS(重症熱性血小板減少症候群)とはどんな病気?】
「SFTS(重症熱性血小板減少症候群)」はマダニが媒介するウイルスによって発祥する感染症です。犬や猫、人間にも感染し、重症化すると命に関わる場合があります。
<犬や猫で見られる症状は?>
感染した犬や猫には、以下のような症状が見られることがあります。
✅発熱や元気消失
✅食欲低下
✅嘔吐や下痢
✅ふらつきやけいれんが起こる
✅歯茎や皮膚の出血斑(血小板減少によるもの)
そのまま放っておくと、重症化して命に関わることもあるため、早期発見・早期対応がとても重要です☝
<犬や猫、人間の致死率が高いって本当??>
国立健康危機管理研究機構(JIHS)の統計によると、SFTSを発症した場合の致死率は以下の通りです。
🔸猫 64.7%
🔸犬 26%
(出典:国内のネコ・イヌにおける重症熱性血小板減症候群の発生状況|国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト)2025年7月現在
猫は発症すると約6割が命を落とし、犬でも4頭に1頭以上が重症化して命に関わる危険があります。
人間の致死率も約27%と高く、高齢者や免疫力が低下している方はさらにリスクが上がります。
<感染ルートは「マダニの咬傷」>
SFTSウイルスは、ウイルスを持ったマダニに噛まれることで感染します。
マダニは草むらや山間部などに生息しており、お散歩中に犬の皮膚に付着して血を吸う際、体内にウイルスを送り込むことがあります。
猫の場合も、外に出る習慣があるとマダニに咬まれるリスクが高まりますし、人間もマダニが生息しているエリアに立ち入ることで咬まれるリスクがあります。
<実は「犬や猫から人へ」感染する可能性も…>
感染した犬や猫の体液(唾液、血液、排泄物など)を通じて、人間にうつる可能性があります。
普段の生活の中で、ペットに顔や口を舐められる、噛まれる、引っかかれた傷口を舐められるといった行為は、感染リスクを高める可能性があるため注意が必要です。
特に、免疫力が低下している高齢の方や、持病をお持ちの方は、感染によって重症化するリスクが高くなるため、より一層の注意が重要です。
【💥全国の発生状況と実際の事例とは】
厚生労働省の統計によると、SFTSはこれまで西日本を中心に毎年100件前後の患者報告がありましたが、近年は関東地方でも少しずつ感染例が増加しています。
神奈川県松田町でも2025年6月、畑作業中にマダニに咬まれた女性がSFTSを発症した事例が報告されています。
また、過去には茨城県で脱走した猫がマダニに感染し、その後SFTSを発症して亡くなったケースや、三重県ではSFTSに感染した猫を診察していた獣医師が感染・死亡したケースも報告されています。
こうした事例は決して特別な場所だけに起こるものではなく、日常生活の中でも感染リスクがある病気であることを示しています。
(出展:厚生労働省「SFTS Q&A」)2025年7月現在
【💥マダニ予防薬の効果と限界】
マダニ対策として、動物病院などでよく処方されるノミ・マダニの予防薬はマダニの寄生や繁殖を抑える重要な手段です。
ただし、多くの予防薬はマダニが皮膚に咬みついて吸血した際に薬の成分がマダニの体内に入ることでマダニを駆除するという仕組みになっているため、マダニに噛まれた“瞬間”にウイルスが体内に入ってしまうリスクは、完全にゼロにはできません。
一方で、「マダニが皮膚に触れただけで駆除できる」とされている接触駆除型の予防薬もありますが、こちらもまれにマダニが付着した部分に十分な薬剤が届いていなかった場合などは、すべてのマダニを100%防げるわけではありません。
また、SFTSはマダニに吸血されている時間が長い程感染リスクが高くなるため、噛まれた際は「早期の駆除がとても重要」と考えられています。
【💥SFTSの予防は日常から!飼い主様ができるSFTS対策】
SFTSは「この薬さえ使っていれば絶対大丈夫!」と言いきれるものではないで、予防薬+日常での予防習慣を組み合わせることが大切です☝
当院としても飼い主様に『自分でできる予防』をしっかり行っていただきたいと思っております。
ぜひ以下の様な対策を取り入れてみてくださいね。
🔸予防薬は「欠かさず続ける」
- 獣医師の相談のもと、年間を通して使用することを推奨しています。
- マダニは気温20度以上で活動が活発になり、冬でも暖かい日は動きます。
- 投薬忘れを防ぐため、カレンダーやアプリで管理しましょう。
🔸お散歩コースの選び方にも一工夫を
- 草むらや山道、川沿いはマダニの生息地になりやすいので、舗装路や整備された公園を選ぶと安心です。
- お散歩の楽しさを損なわない範囲で、日ごとのルートを見直しましょう。
まずは「今日はちょっと草むらを避けようかな」と、意識することから始めてみましょう😉
🔸帰宅後のチェックが予防につながる
- 耳の裏・首・脇・足の付け根・尻尾の付け根を重点的に確認
- 草むらで頭を突っ込んだ場合は顔やこめかみもチェック!
- マダニを見付けても自分で取らず、動物病院で安全に処置してもらってください

🔸体調の変化にはすぐ対応を
- 元気がない・食欲が落ちた・発熱しているなどの小さな変化も見逃さない
- 自己判断で様子を見ず、早めの受診が予後を大きく左右します
いつもと様子が違うと感じたら、迷わず動物病院で診てもらいましょう!
【💥当院のSFTS対策と、飼い主様へのサポート】
みかん動物病院では、SFTSの地域での発生状況を日々チェックしながら、飼い主様と一緒にできる予防対策を重視しています。
- お子様や高齢者のいるご家庭での予防プランのご相談
- 予防薬の選び方や投薬スケジュールのアドバイス
- マダニ付着時やSFTS疑いの時の診察・検査・隔離対応
愛犬や愛猫に体調不良、発熱、原因不明の元気消失といった変化が見られた場合には、「少し様子を見よう」と自己判断せず、出来るだけ早めにご相談くださいね。
【💥さいごに】
SFTSは決して特別な場所や状況でだけ起こる病気ではなく、普段のお散歩や、お庭で遊んでいる間にも、知らないうちにマダニに咬まれて感染してしまうリスクがある病気です。
そしてもうひとつ忘れてはいけないのが、感染した犬や猫を通じて、飼い主様ご自身やご家族にも移ってしまう可能性があること。
だからこそ、私たちが「正しく知ること」「日々できることを重ねていくこと」がとても大切になります。
🍀飼い主様が今日からできること
- 年間を通して予防薬を使い続ける
- 草むらや山道を避けた散歩ルートを意識する
- 帰宅後の全身チェックを習慣にする
- 体調の変化を感じたら早めに受診する
これらを習慣化して、愛犬・愛猫、そして家族を守りましょう✨
SFTSについて、さらに詳しく知りたい!という方向けに、厚生労働省の「SFTS Q&A」も載せておきますので、気になる方はぜひご覧ください。
