症例紹介
角膜ジストロフィー｜犬の目が白く見えるのは病気？
神奈川県秦野市・伊勢原市・平塚市・中井町・二宮町・小田原市にお住まいの皆さま、こんにちは。
神奈川県秦野市の「みかん動物病院」、獣医師の森田です。
「なんだか目が白っぽい気がする」「でも、白内障になるにはちょっと早いかも？」
そんなふうに感じたとき、もしかすると“角膜ジストロフィー”という病気かもしれません。
あまり聞きなれない名前ですが、実はこの病気は、犬の目に比較的よく見られるもののひとつです。
そして、愛犬の目に少しでも濁りが見えると、「見えづらくなっていないかな？」「これからの生活に支障は出ないだろうか」と、とても心配になりますよね。
そこで今回は、角膜ジストロフィーの主な特徴や、気になる予後、そしてご自宅でできるケアのポイントについて、できるだけわかりやすくご紹介します。
■目次
1.角膜ジストロフィーとは？
2.角膜ジストロフィーの種類と症状
3.診断方法と検査
4.治療法と管理方法
5.予後と生活上の注意点
6.まとめ
角膜ジストロフィーとは？
角膜ジストロフィーとは、目の一番外側にある透明な膜である、角膜（かくまく）に異常が生じる病気です。
角膜は、目に入る光を取り込みながら、外からの刺激や細菌などから眼球を守っている、とても大切な部分です。
この病気では、角膜の中にリン脂質やカルシウム、コレステロールといった物質が少しずつたまっていき、円形や楕円形の白っぽい濁りが現れるのが特徴です。
主な原因は遺伝的な体質とされており、特にシベリアンハスキー、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、ビーグルなどの犬種によく見られます。
また、発症の多くは若い頃から中年期にかけてで、猫ではほとんど見られない病気です。
軽度のものであれば、痛みやかゆみ、視力への大きな影響が出ることはほとんどありません。そのため、多くの場合は積極的な治療は必要なく、経過を見守ることになります。
ただし、濁りが進行して重度になると、「角膜潰瘍（かくまくかいよう）」という別の病気を併発することもあります。その場合には、症状の程度によっては角膜の一部を切除する外科手術を検討することもあります。
角膜ジストロフィーの種類と症状
犬の角膜ジストロフィーにはいくつかのタイプがあり、原因となる沈着物質や、異常が起こる角膜の部位によって分類されます。
まず、沈着物質による分類では、リン脂質性、コレステロール性、カルシウム性といったタイプがあり、これらの物質が角膜にたまることで、白く濁ったような見た目になります。
また、発症する角膜の部位によっても以下の3つに分けられます。どのタイプも、角膜に白い混濁が見られるのが特徴です。
・上皮性：角膜の表面にあたる部分
・間質性：角膜の中間層
・内皮性：角膜のもっとも深い部分
さらに、片方の目だけに現れる場合と、両目に現れる場合があります。濁りは角膜の中央にできることが多いですが、犬によっては周辺部に現れることもあります。
初期の段階では視力への影響はほとんどなく、痛みやかゆみ、充血などの症状が見られないことが多いため、日常生活に支障が出ることは少ないと言えます。
しかし、進行のスピードには個体差があり、時間がたつにつれて少しずつ濁りが広がっていくこともあります。そのため、普段から愛犬の目の様子をこまめに見てあげることが大切です。
診断方法と検査
角膜ジストロフィーの診断は、まずは目の見た目のチェック（視診）と、いくつかの眼科検査によって行われます。
視診で角膜の白っぽい濁りが確認された場合には、スリットランプ検査（細隙灯検査）と呼ばれる専門的な検査を行い、濁りの位置や広がり、どのくらいの深さにあるかを詳しく調べます。
さらに、眼圧を測る検査で、緑内障など他の目の病気が隠れていないかを確認したり、フルオレセイン染色という特殊な染料を使って、角膜に傷がついていないかどうかを調べたりします。
これらの検査を組み合わせて、角膜ジストロフィーかどうかを慎重に判断していきます。
治療法と管理方法
犬の角膜ジストロフィーは、多くの場合、進行がとてもゆるやかで、視力に大きな影響を与えることは少ない病気です。そのため、通常は特別な治療を行わずに様子を見るケースがほとんどです。
大切なのは、病気を過度に怖がりすぎず、愛犬の目の状態を日ごろから観察しながら、定期的に動物病院で経過を確認することです。
ただし、まれに混濁が広がって視界をさえぎるほどになる場合や、角膜潰瘍（かくまくかいよう）や炎症を併発してしまうこともあります。
そのようなときには症状に応じて、抗炎症薬や人工涙液の点眼などの治療が行われます。
さらに、視力障害が強く日常生活に支障が出てしまう重度のケースでは、角膜の一部を移植するような外科的な治療（角膜移植など）が検討されることもあります。
＜ご家庭でできるケア＞
日常生活の中で飼い主様ができるケアとしては、目の乾燥を防ぐための点眼や目のまわりを清潔に保つためのやさしい洗浄などが効果的です。
また、目の濁りや赤み、いつもと違う目やになど、少しの変化でも見逃さないように意識し、もし気になる症状が見られた場合は、なるべく早めにかかりつけの獣医師に相談するようにしましょう。
予後と生活上の注意点
犬の角膜ジストロフィーは進行がとてもゆるやかで、視力に大きな影響を及ぼすことは少なく、予後は比較的良好とされています。
多くのケースでは視覚障害が起こらず、これまで通りの日常生活を無理なく送ることができます。
ただし、まれに濁りが広がって視界をさえぎるようになることもあるため、日ごろから目の状態をよく観察し、定期的に動物病院でチェックを受けることが大切です。
＜生活上の注意点＞
愛犬が快適に、そして安全に過ごすためには、目の状態に応じた環境づくりがとても重要です。
・視野が少し狭くなっても動きやすいように、家具の配置を見直して、お部屋の中を広く・シンプルに保つ。
・鋭い角のある家具や突起物が、目の高さにこないように工夫する。
・ジャンプや激しい動きで目をぶつけてしまうリスクにも注意する。
またお散歩の際には、草むらやほこりが舞いやすい場所はなるべく避けるようにし、状況に応じて、犬用の目の保護ゴーグルを使うのもひとつの方法です。
まとめ
「角膜ジストロフィー」という名前を聞くと、少し難しく感じるかもしれませんが、病気の特徴をしっかり理解し、目の状態に合わせた環境づくりやケアをしていくことで、愛犬・愛猫はこれまで通り穏やかな生活を送ることができます。
毎日のちょっとした変化にも気づけるのは、いつもそばにいる飼い主様だからこそ。
「目が白っぽく見える」「いつもと違う気がする」と感じたら、些細なことでもかまいませんので、どうぞお気軽に当院までご相談ください。
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