症例紹介
大腿骨頭壊死症(レッグペルテス)|歩き方が変?チワワやトイプードルで注意したい股関節の病気
神奈川県秦野市・伊勢原市・平塚市・中井町・二宮町・小田原市にお住まいの皆さま、こんにちは。
神奈川県秦野市の「みかん動物病院」、獣医師の森田です。
「大腿骨頭壊死症(レッグペルテス病)」という病名を耳にされたことはありますか?
あまり聞き慣れないかもしれませんが、特に小型犬に多く見られる股関節の病気のひとつです。
この病気では、股関節を構成する大腿骨の骨頭部分に血液が十分に届かなくなり、骨が壊死(細胞が死んでしまう)してしまいます。
そのため、犬が急に後ろ足をかばうような動きを見せたり、歩き方に違和感が出たりすることがあります。
今回は、レッグペルテス病の症状や診断方法、治療の選択肢について解説します。
■目次
1.レッグペルテスとは?
2.主な症状
3.診断方法と検査
4.治療法
5.術後のリハビリと回復過程
6.まとめ
レッグペルテスとは?

レッグペルテス病(大腿骨頭壊死症)とは、大腿骨頭への血流が低下することにより、骨頭部分が壊死(細胞が死んでしまう)してしまい、関節が変形してしまう病気です。
この病気は、トイ・プードルやチワワなどの小型犬に多く見られ、特に1歳までの若い犬に発症しやすいのが特徴です。
正常な股関節では、大腿骨の先端(大腿骨頭)が骨盤のくぼみ(寛骨臼)にしっかりとはまり込み、スムーズに動く構造になっています。
しかし、レッグペルテス病になると、血流障害によって大腿骨頭が壊死・変形してしまうため、関節の中に隙間が生じ、滑らかな動きができなくなります。
その結果、関節部分に炎症が起こったり、軟骨が傷ついたりすることで、強い痛みを伴うようになります。
主な症状
レッグペルテス病を発症した犬は、股関節に痛みを感じるため、後ろ足をかばうような歩き方をすることがあります。
具体的には、足を引きずるように歩いたり、時には後ろ足を浮かせて“ケンケン”のような歩き方をしたりする仕草が見られます。
また、痛みのある股関節に触ろうとすると、嫌がったり怒ったりすることもあります。
さらに、症状が進行していくと、犬は痛みを避けるために患側(痛みのある方の足)をあまり使わなくなるため、使われなくなった足の筋肉が徐々にやせ細り、左右で足の太さに明らかな違いが出てくることもあります。
こうした症状は、病気の進行とともによりはっきりと現れるようになり、最終的には後ろ足をまったく地面につけなくなることもあります。
診断方法と検査
診察ではまず、触診によって痛みのある部位を大まかに特定し、実際の歩き方を観察するところから始まります。
後ろ足に痛みが出る病気には、股関節形成不全や膝蓋骨脱臼(パテラ)など、他にもさまざまな原因が考えられるため、これらとの鑑別(見分けること)が重要です。
そのため、より正確な診断のためには、レントゲン検査(X線検査)が欠かせません。
レントゲン画像を用いて、大腿骨頭(太ももの骨の先端部分)やその周辺の骨構造に異常がないかを確認します。
ある症例の術前レントゲンでは、左側の大腿骨頭(赤丸で示した部分)が術後の写真と比べて形が不規則でカクカクしており、骨盤との間に隙間ができている様子が確認できました。

治療法
レッグペルテス病の治療は、症状の進行具合によって異なります。
初期の段階では、痛み止めの内服や安静にすることで一時的に症状を和らげることが可能です。
しかし、時間の経過とともに痛みは徐々に強くなり、日常生活に支障をきたすケースが多いため、根本的な治療としては外科手術が推奨されます。
ここ数年で少しずつ根治を目指す『大腿骨頭全置換術』を行う病院が増えてきましたが、当院では痛みをとることを目的とした救済的手術として、壊死してしまった大体骨頭を外科的に切除する「大腿骨頭切除術」を行います。
壊死部分を取り除くことで痛みの原因が取り除かれ、術後に適切なリハビリを行うことで、正常に近い歩行ができるようになることも多く見られます。
(※回復の程度には個体差があります)
ただし、手術には全身麻酔が必要となるため、麻酔リスクを考慮する必要があります。
また、術後の傷口にまれに細菌感染が起こり、ジュクジュクとした炎症を起こすことがあるため、術後管理や経過観察も重要です。
それでも、適切な手術とリハビリを行うことで、再び痛みのない歩行を取り戻せる可能性が高い疾患です。
実際の術後レントゲン写真では、左足の大腿骨頭が切除されている様子が確認できます。
術後のリハビリと回復過程
手術が終わったあとも、しっかりと回復していくためには、リハビリがとても大切です。
特に、周りの筋肉を動かしながら関節の動く範囲(可動域)を少しずつ広げていくことが、スムーズな歩行の回復につながります。
ご自宅でできるリハビリとしては、以下のような方法があります。
・股関節をゆっくりと曲げ伸ばす運動を、飼い主様の手でやさしく行う
・右回り・左回りにゆっくりと歩かせる
・坂道を無理のない範囲で上り下りさせる
・「おすわり」と「立つ」を交互に繰り返すトレーニング
これらはすべて、焦らず、愛犬の様子を見ながら、痛みや違和感がないかを確認しつつ、ゆっくり進めていくことがポイントです。
<回復の流れ>
術後1週間ほどは安静が基本になります。必要に応じて冷やしてあげる(アイシング)と、炎症や腫れの軽減に役立ちます。
この時期は、軽めのマッサージや関節をやさしく動かすリハビリ(受動的運動)から始めるとよいでしょう。
2週目以降になったら少しずつ歩かせる練習もスタートし、およそ3週間ほどかけて運動量を増やしていきましょう。
もし可能であれば、水中トレッドミルやプールを使ったリハビリもおすすめです。水の中では関節への負担が少なく、無理なく筋力をつけることができます。
そして、4週目以降には徐々に歩く距離や時間を延ばしていき、軽い坂道を取り入れるなどして少しずつ負荷を増やしていきます。
ふだんの生活を違和感なく送れるようになるまでには、3か月ほどかかることが多いです。
そのため、焦らず、愛犬の様子を見ながら獣医師と相談しつつ、段階的にリハビリを進めていくことが大切です。
まとめ
レッグペルテス病は、時間とともにゆっくり進行し、後ろ足に強い痛みをもたらす病気です。
けれども、早めに気づいて適切な治療を受け、根気強くリハビリに取り組むことで、愛犬が再び元気に歩けるようになる可能性は十分にあります。
愛犬の生活の質を少しでも良くしてあげるためには、飼い主様の毎日のちょっとした観察や、「なんだか歩き方が変かも」と感じたときの早めの受診がとても大切です。
もし気になることや不安な点があれば、どうぞお気軽にご相談ください。
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