症例紹介
犬猫の成長板骨折について 犬猫の上腕骨遠位端骨折(成長板骨折)|成長への影響と精密治療を獣医師が解説
こんにちは。神奈川県秦野市の「みかん動物病院」獣医師の森田です。
「ソファから飛び降りた直後に、前足をつかなくなった」
「少し踏んでしまったら、鳴き声を上げて動かなくなった」
そんな一見軽いケガのような出来事から、実は骨の成長に関わる深刻な骨折が起きていることがあります。
特に成長期の犬や猫では、骨の端にある成長板が非常にデリケートで、ちょっとした衝撃でも成長板骨折を起こしてしまうことがあります。
そこで今回は、犬猫の成長板骨折について、特徴や当院での症例を交えながら解説したいと思います。
■目次
1.成長板とは?なぜ骨折しやすいのか
2.Salter Harris分類と骨折の重症度
3.症状と診断のポイント
4.手術や治療法
5.治療後の経過と成長への影響
6.まとめ
成長板とは?なぜ骨折しやすいのか
成長板(骨端線)とは、骨の端にある“軟骨の層”で、骨の長さを伸ばす役割を担っています。
しかし、この部分は柔らかく、成犬の骨と比べて脆いです。
そのため、転倒やジャンプの着地など、軽い衝撃でも簡単に損傷してしまうのです。
成長板骨折が多く見られるのは、骨格の成長がまだ完了していない生後3〜10か月齢の子犬や子猫です。
特に小型犬(トイプードル、ポメラニアン、チワワなど)は骨が細く、落下事故による上腕骨遠位端骨折がよく見られます。
Salter Harris分類と骨折の重症度
成長板骨折は「Salter-Harris分類」という国際的な分類で評価されます。
この分類は、骨折線が成長板や骨端(関節側)にどのように及んでいるかによって、Ⅰ型〜Ⅴ型に分けられます。
Ⅰ型:成長板のみでの分離。比較的予後良好。
Ⅱ型:成長板+骨幹端(成長板のすぐ上の部分)の一部が割れるタイプ。最も多い。
Ⅲ型:成長板と関節面に骨折線が入るタイプ。正確な整復が必要。
Ⅳ型:骨折線が成長板をまたいで骨幹端から軟骨面にまで伸びる重症のタイプ。
Ⅴ型:成長板の圧迫損傷。X線での判別が難しく、成長障害を起こしやすい。
特にⅣ型は、成長板と関節面の両方にダメージを与えるため、治療精度がわずかにずれても関節の変形などが起きる可能性があります。
そのため骨折のタイプを正確に分類し、治療方針を決定することが大切です。
症状と診断のポイント
成長板骨折の主な症状は、患肢の挙上(足をつかない)、強い痛み、腫れです。
痛みにより、元気や食欲がなくなることもあります。
診断にはX線検査が基本ですが、成長板は軟骨組織で構成されているため、レントゲンでは骨折線がはっきり見えないことがあります。
そのため、複数方向からのレントゲン撮影や、必要に応じてCT検査による三次元的評価を行うことで、正確な診断を行います。
手術や治療法
成長板骨折で最も大切なのは、「正確な整復(位置合わせ)」です。わずかなズレでも、将来的に骨の成長方向が変化し、腕の変形を残すことがあります。
したがって、整復精度がそのまま予後を左右することになります。
上腕骨遠位端は関節に近く、骨片が小さいため、手術にはとても繊細さが求められます。
また、手術のタイミングも非常に重要です。ケガをしてから時間が経ってしまうと、骨片が癒着して整復が困難になります。可能であれば24〜48時間以内の早期手術が理想です。
治療法としては、Kワイヤー(ピン)やラグスクリュー(ねじ)を用いた固定手術をします。
Kワイヤーは細く柔軟性があるため、小型犬や猫でも成長板を損傷しにくく、骨片の位置を微調整しながら固定できるという利点があります。
一方で、ラグスクリューは骨片同士を圧着して強固に安定化させる力があり、関節面のずれを防ぐのに有効です。
<当院の治療症例・手術例>
こちらの症例では、肘関節に近い部分での関節内骨折(Salter Harris IV型)が見られました。

そのため、Kワイヤーで正確に整復した後、ラグスクリューで補強する併用法をとることで、成長板へのダメージを最小限にしつつ十分な固定力を得ることができます。

当院は整形外科の手術経験が豊富で、幅広い症例に対応しています。他院で治療が難しいと言われた場合でも、どうぞ一度ご相談ください。
治療後の経過と成長への影響
手術後は、3〜4週間の安静が必要です。ケージレストや短時間の抱っこや散歩をして過ごしましょう。
その後、レントゲンで骨癒合を確認し、徐々にリハビリを行います。
成長板の機能が回復しているかは、定期的なX線検査で評価します。
もし治療が不十分で成長板の一部が早期に閉鎖してしまうと、腕の短縮や湾曲といった後遺症が残る可能性があります。
そのため、定期的な経過観察で状態を見守り、骨の回復が完了する1〜1.5年程度の長期的なフォローが重要です。
まとめ
成長板の骨折は、将来の成長や歩行に大きな影響を及ぼす可能性のあるケガです。
その中でも特に上腕骨遠位端は関節に近く、治療には高い精度と早期対応が求められます。
しかし適切な治療を行えば、本来の関節の動きや生活を取り戻し、健やかに成長することができます。諦めずに、共に治療をしていきましょう。
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